ヤマダHDとエディオンで家電市場の最大42%の衝撃、家電メーカーの衰退で、売上高2.5兆円の巨大家電量販店が誕生
- 細田 立圭志

- 6月9日
- 読了時間: 8分
売上高2.5兆円、直営店1410店の巨大家電量販店が誕生する。ヤマダホールディングス(ヤマダHD)とエディオンは6月5日、両社の相互信頼と対等統合を基本とする持株会社方式による経営統合で基本合意を結んだ。共同仕入れによる仕入れ原価の削減やプライベートブランド(PB)やSPA(製造小売り)の開発能力などを強化する。家電業界を俯瞰すると、国内家電メーカーの再編が、両社によるメーカー機能の強化というパラダイムシフトを招いた。

2025年4月、ヤマダHDから経営統合の申し入れ
家電量販店で売上高1位のヤマダHDと5位のエディオンが経営統合に向けて動き出した。2026年3月期のヤマダHDの売上高1兆6918億円とエディオンの売上高7937億円を合計すると約2.5兆円。国内家電市場が6~7兆円といわれていることから、36~42%のシェアを占める計算になる。2位ノジマの9828億円を大きく引き離す。

直営店はヤマダHDが957店、エディオンが453店の合計1410店。エディオンは02年に、広島のデオデオと名古屋のエイデンが、05年に近畿地方を地盤とするミドリ電化が経営統合した出自からして、中国、関西、中部地方のドミナント戦略でブランド力がある。
一方のヤマダHDは全国に店舗網を持つ。エディオンとの経営統合により、顧客とリアルに対面できる店舗を全国に1410カ所持つことになる。
具体的な協議は25年4月、ヤマダHDからエディオンに申し入れがあったことで始まった。その後、山田昇代表取締役会長兼CEOと久保允誉代表取締役会長執行役員CEOは複数回の面談を重ねたという。

久保会長は山田会長と最初に出会った13年当時を振り返った。
「13年にヤマダ電機(現ヤマダHD)がベスト電器を傘下に収めた際、エディオンが6店舗を譲り受ける交渉過程で、私は山田会長とお互いの経営観や商売のあり方について意見交換をした。この時、家電・住まい・環境の3本柱で事業を拡大するという山田会長の話が印象的だった。エディオンもリフォームやリサイクル事業に着手しており、方向性が一致していることに驚いた」。
家電だけではなく、住宅販売やリフォーム、リサイクルを新しい事業の柱に据える点で、両社の経営の方向性は当時から一致していたようだ。
「それから13年の月日が流れたが、昨年4月からの山田会長との面談で再認識したのは、家電、住まい、リフォームの3本柱で事業を拡大していくという基本的な考え方に相違がなかった。当社と同じ考えのもと、事業展開をしている家電量販店はヤマダHDしかなかった」。

今回の持株会社方式は、売上高と店舗網で約2倍、総資産で約3倍などヤマダHDが圧倒的に大きいが、対等統合となる点もポイントだ。持株会社の商号は決まっていないが、ヤマダHDやエディオンとは異なる、まったく新しい商号になるという。本社は東京を予定。代表取締役会長に山田会長、代表取締役社長に久保会長が就任する。取締役と社外取締役は両社から同数ずつの候補者を指名する。
持株会社は27年10月1日に東証に上場する予定で、傘下の完全子会社となるヤマダHDとエディオンは上場廃止となる。両社の店舗ブランドは残る。
なぜこのタイミングだったのか
家電量販店の再編は12年にヤマダ電機(現ヤマダHD)がベスト電器を、ビックカメラがコジマを買収して以降、大きな動きはなかった。1位ヤマダHD、2位ノジマ、3位ビックカメラ、4位ヨドバシカメラ、5位エディオン、6位Joshin(26年3月期)という構図は、順位の入れ替えはあったにせよ、勢力図は今後も続くものと思われていた。ヤマダHDとエディオンが手を結ぶなど、誰も想定していなかったことだ。

なぜこのタイミングだったのかについて、久保会長は次のように語った。
「今後、家電市場は人口減少により出荷台数は減少すると予想される。国内家電メーカーは高付加価値商品にシフトしており、エディオンも海外メーカーと取引を始めたが、年間の発注数はまだ十分ではない。
物流の2030年問題で、配送・設置コストの上昇、配送員不足が懸念されている。ネット販売の拡大に対応するための全国的な物流網の再構築も必要になっている。さらに、循環型社会を実現するために家電のリサイクル体制を強化することも重要だ。
これらを解決するには時間を要するので、志と目指すべき方向が一致しているパートナーがいるのであれば、なるべく早いタイミングで経営統合することがベストだと判断した」。
16年に台湾・鴻海精密工業とシャープ、18年に中国・ハイセンスとTVS REGZA(旧東芝のテレビ事業)に始まり、25年にノジマとVAIO、26年に中国・TCLとソニーのテレビ事業、ノジマと日立の白物家電事業、欧州と北米における中国・スカイワースとパナソニックのテレビ事業の包括的な業務提携など、国内家電メーカーが外資や国内流通に買収されたり、提携する動きが加速している。

また、家電業界以外の異業種から家電市場の参入が相次ぐなど、業界の垣根を超えた競争環境が変化している。山田会長は「家電業界が歴史的、構造的な変化に直面している」と危機感を強める。
国内家電メーカーに、コンシューマ向け家電のすべてを手掛ける総合家電メーカーとしての体力はなく、事業の選択と集中が行われた。事業を集中しても、フラッグシップからエントリーモデルまでフルラインアップで戦う余力もなく、高付加価値モデルに集中せざるを得ない。
そのため家電量販店の売り場では、中・低価格帯のボリュームゾーンの品揃えが減った。円安で海外調達コストが高まる中、海外メーカーだけでそのゾーンを埋めるのは無理がある。結果的に、家電量販店自らがメーカー機能を備え、ボリュームゾーンの品揃えを強化する必要がある。家電量販店がPBに注力する背景には、こうした構造的な変化がある。
PB・SPAの拡大に急を要するヤマダHD
エディオンはe angle、ヤマダHDはドラム式洗濯乾燥機「RORO」シリーズに代表されるPBやSPA商品に注力しているものの、1社単独で事業を拡大するには「時間を要する」し、限界がある。そこで、経営の志や方向が一致するパートナーであるヤマダHDとエディオンが経営統合し、商品開発力や生産効率、経営資源の効率を上げる。

中・低価格帯の品揃えでいえば、両社のリサイクルやリファービッシュ家電も有効な手段となるだろう。消費者から回収した家電の資源の再利用は、まさにスケールメリットが活かせる領域だ。
なお、エディオンは22年4月にニトリHDとPB商品の共同開発や商品の相互供給、ECでの相互送客などで資本業務提携しており、既に幅広いジャンルの商品を販売している。ニトリHDはエディオンの大株主でもあり、今回の経営統合について、久保会長はニトリHDの似鳥昭雄代表取締役会長に事前に説明したという。
山田会長は「ニトリさんとは古い付き合い。取扱商品が重なる部分はあっても、お互いが前向きに事業展開を考えていければ、大きな力になる」と、前向きにとらえる。

もっとも、ヤマダHDにとってもPBやSPAの強化、拡大は急を要している。26年3月期のデンキセグメントであるヤマダデンキの売上高は1兆3294億円(前期比101.3%)と増収だったものの、営業利益は249億円(同8.3%)だった。約240億円の戦略的在庫処分を実施した影響が大きいが、在庫処分の影響を除いたとしても営業利益は2649億円(同87.7%)の減益だった。

一方で、ヤマダデンキのPB+SPA オリジナル商品の売上高は1522億円(同124.1%)で、売上高構成比で11.2%(前期から1.8ポイントプラス)と好調だ。デンキセグメントの減益を改善するには、高粗利のPBやSPAのさらなる拡大とスピードが求められる。

ニトリとの鉄のトライアングルは築けるか
ヤマダHDとエディオン、ニトリHDは、ロードサイドに行けば互いの店舗が並んでいる。普段はバチバチの戦いを繰り広げている競合同士だ。その3社が今回の経営統合をきっかけに、鉄のトライアングルを築けるのなら、大きな勢力になり得るだろう。

久保会長は2代目だが、エディオンをここまで成長させた実質的な創業者。山田会長と久保会長、似鳥会長の創業者同士がタッグを組めば、経営判断のスピードは早いだろう。しかし、少しでも方向性がかみ合わなかったり、疑心暗鬼になれば空中分解するもろさもある。
この点、久保会長は「意見の相違はあっても、お客様のため、社員のため、業界のためというベースがしっかりしているので安心してほしい」と訴えた。山田会長は「企業文化を互いに尊重し、二人で知恵を出しながらやっていくことで、懸念されるようなことはないと思う。サラリーマン社長とはちょっと違うんじゃないかなと思っている」と語り、大局的な見地から互いに協力していく姿勢を強調した。
ECの物流網やリフォーム事業でエディオンにメリット
関東以北のブランド力に課題があるエディオンにとっても、20年度比で1.5倍以上伸びているEC販売を拡大するために、ヤマダHDの物流網を活用できるメリットは大きい。
エディオンは、30年にリフォーム事業の売上高1000億円を目標に掲げている。ヤマダHDの暮らし事業のノウハウやアセットを使うことで、シナジー効果を生み出せるだろう。

両社の経営統合で課題として考えられるのは、家電市場における独占禁止法の抵触だ。冒頭で述べたように、両社の売上高約2.5兆円は家電市場の最大42%のシェアに匹敵する。
地域密着型の店舗でいえば、エディオンのFCは727店、ヤマダHDのFCとVC(ボランタリー・チェーン)のコスモス・ベリーズなど7817店ある。個々の売り上げ規模は小さいものの、家電市場のメッシュはさらに細かくなる。
山田会長は「経営統合を行うにあたって必要となる関係当局の承認などを得ることが前提になる」と語る。
エディオンが強い中国や関西、中部地域によっては、ヤマダHDと合わせるとシェア50%を超えるエリアも出てくるだろう。持株会社への移行に向けては、公正取引委員会など政府の判断もカギを握っている。だが、家電業界の「歴史的な変化」というパラダイムシフトを踏まえれば、この大きな流れに抗えないのではないか。(BCN総研・細田 立圭志)



