<2026年どうなる家電量販店>ヤマダデンキは「デンキ」の復活がカギ、ビックカメラは先手必勝で池袋市場を抑える
- 細田 立圭志

- 1月28日
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短期連載<2026年どうなる家電量販店>では、2025年の家電流通市場や決算資料などを振り返りながら、家電量販店各社の26年を占う。今回はヤマダデンキとビックカメラの2社だ。

エアコン、ゲーム、PCで売上増、住宅の狭小化で「コンパクト家電」も
2025年の家電流通市場の全体を振り返ろう。「二季」といわれるほど夏の猛暑期間が長引き、家電量販店の主力販売商品であるエアコンが好調だった。また、6月に任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」が発売となりゲームが伸びたり、10月14日のWindows 10 サポート終了(EOS)にともなうPCの買い替え需要が発生したりした。ただ、ゲームやPCは粗利益率が低いカテゴリーのため、売上高は前年を上回っても、利益は下回るという企業もあった。
インバウンドも引き続き好調だった。日本政府観光局(JNTO)によると、25年のインバウンドは4268万3600人(前年比115.8%)となり過去最多を記録。4200万人を突破した。都市部に店舗を多く構える家電量販店で免税売り上げが伸びた。

ただ、26年については、日中関係の悪化による訪日中国人客の減少が見込まれている。インバウンドの2割強を占める年間約910万人のインパクトだ。中国人客向けに揃えていた商品ラインアップの見直しが迫られる。
また、円安による資材や物価の高騰で家電製品の価格も上昇。消費者の節約志向を意識し、買い求めやすい価格帯のPB商品の取り扱いを増やす家電量販企業もある。国内メーカーによるNBの上位モデルと、家電量販店のPB商品における価格の二極化が広がっている。
さらに、都市部における住宅価格の高騰も家電製品のトレンドに変化をもたらしている。住宅価格を抑えるためにマンションなど住宅の狭小化が進んでおり、メーカーや家電量販店のPBでは幅がスリムなドラム式洗濯乾燥機や冷蔵庫などを投入しているのだ。単身・二人世帯の増加や、ここ数年の各家電量販企業が取り組んでいる「家電以外」の新領域で収益を上げる動きも引き続きみられる。

白物家電は1991年に次ぐ2番目の出荷
市場全体の数字をみよう。白物家電の国内出荷統計をまとめている日本電機工業会(JEMA)の25年度上期(金額ベース)は1兆3911億円(前年同期比103.5%)と前年を上回った。上期としては1991年に次ぐ過去2番目の出荷金額だった。
全体の約4割を占めるエアコンが5505億円(同109.0%)と好調。エアコンは7月や8月のピーク時に故障すると、修理サービスがひっ迫し、設置まで約2週間かかることもある。室内での熱中症などで命にかかわる危険もあり、業界では早期試運転の推奨を促した。そうした効果もあり、6月から前倒しで需要を刈り取った。
他にも空気清浄機は207億円(同109.7%)、ジャー炊飯器は506億円(同104.8%)、電気シェーバーは290億円(同109.7%)と好調だった。ジャー炊飯器は、古米など政府備蓄米の放出で、新米でなくてもおいしく炊ける高級ジャー炊飯器に注目が集まった。空気清浄機や電気シェーバーは、インバウンドにも人気で、引き続き需要の拡大が見込まれる。
一方で、冷蔵庫は2022億円(同94.7%)、洗濯機は1896億円(同99.6%)と前年を下回った。JEMAでは「冷蔵庫は大型から中型タイプにシフト。洗濯機は物価高騰による消費者の買い控え」と分析。先述した、居住スペースの狭小化も影響しているのだろう。
デジタルはPCが好調も6年連続前年割れ
テレビや音響機器などデジタル家電の国内出荷データをまとめる電子情報技術産業協会(JEITA)による25年(1~12月)の国内出荷金額は、市場全体で1兆134億円(同96.8%)と前年を下回り、20年から6年連続の前年割れが続く。
内訳は映像機器が4885億円(同93.2%)、オーディオ関連機器が617億円(同94.8%)、カーAVC機器が4633億円(同101.2%)だった。テレビは大画面化が進み、60型以上が台数ベースで前年を上回ったものの、構成比の多くを占めるそれ以下のインチのほとんどが前年割れを喫した。
また、BDレコーダーは、スマホやテレビでの動画配信視聴が進み、62万3000台(同80.1%)まで縮小。26年1月9日に、TVS REGZAがレグザブルーレイ全製品の生産を完了すると発表するなど、消費者の視聴スタイルの変化には抗えず今後も縮小傾向が予想される。
一方、Windows 10のEOSの影響を受けたPCは大幅伸長。PC全体では25年4~11月の国内出荷金額は7672億円(同133.3%)。内訳でデスクトップPCは1122億円(同133.3%)、ノートPCは6551億円(同133.3%)といずれも大きく伸びた。先述したように、PCは粗利益率が低いため、急増すると粗利ミックスにより家電量販店の営業利益を押し下げる要因になる。また、来期の反動減も予想されるため、今後のデジタル家電全体でどのように売り上げと利益を確保していくのか、難しいかじ取りが求められる。
全国の主要家電量販店・ネットショップからPOSデータを通じてスマホや4Kテレビなどの販売台数・金額データを毎日収集・集計している「BCNランキング」では、107カテゴリーを集計。25年1~12月では、台数ベースで同100.6%、金額ベースで同110.6%だった。EOSによるPCやPC周辺機器の販売が、金額を二桁増に押し上げた。
25年を振り返ると、一部カテゴリーで苦戦は見られるものの、全体として白物もデジタルも家電市場は好調に推移した。
ヤマダHDは「デンキ」が減収減益、SPAや札幌の超大型店で巻き返し
家電量販企業の26年3月期上期決算を見ていこう。最大手のヤマダホールディングスの売上高は8000億9900万円(前年同期比100.5%)、営業利益は216億7100万円(同93.3%)、経常利益は239億9500万円(同96.6%)、当期純利益は127億8000万円(同100.1%)の増収減益だった。
主力である家電販売の「デンキ」の売上高が6476億200万円(同98.1%)、営業利益が183億7900万円(同81.8%)と落ち込んだのが大きい。同社では売場面積約9900平方メートル以上を目安とし、異業種のスーパーやホームセンターなどと共同出店する「LIFE SELECT」をモデル店舗としている。超大型店の出店に伴うスクラップ&ビルドにより、LABI津田沼やLABI仙台などの大型店舗の退店が発生。また、7月度のエアコンなど季節家電の反動減が影響して家電が減収になったと分析する。

利益面では、PCやスマホ、ゲーム機など粗利益率の低い商品が伸び、トータルでの粗利益率を押し下げた。また、LIFE SELECTを中心とする「ヤマダ経済圏」を構築するために、ポイント施策を強化したことで粗利益が前年同期比99.7%になったことも響いた。

下期は、高粗利のSPA商品であるドラム式洗濯乾燥機「RORO」や「JVC Fire TV」などの売上伸長、リフォームや家具・インテリアなど高粗利な「くらしまるごと」商品の提案強化で巻き返しを図る。また、ポイント施策でも高粗利商品の雑貨などで利用を促し、粗利益の押し上げを狙う。さらに、11月末にオープンした北海道札幌市の「Tecc LIFE SELECT 札幌北33条店」は、同社で最大級の売場面積を誇り、北34条駅から徒歩約4分の好立地。売り上げの拡大が期待される。

下期は、主力「デンキ」事業の復活が欠かせない。なお、「デンキ」以外の「住建」「金融」「環境」の売上高はいずれも前年を上回っている。
ビックカメラは売上高、利益とも過去最高を更新、ECに伸びしろ
ビックカメラは25年11月14日、地元・池袋の3店舗(池袋本店、池袋カメラ・パソコン館、池袋西口店)をリニューアルオープンした。ヨドバシカメラの池袋進出を迎え撃つ形での施策だったが、25年内のオープンが報じられていたライバルの出店計画が視界不良となる中、先行する形で池袋市場を囲い込む。

サブカルの街としてアニメやeスポーツで賑わう池袋で、これまで取りこぼしていた若い客層を新規に取り込むことで、売り上げの増加を図る。アニメのキャラクターグッズを取りそろえたPOP UPコーナーや、グッズフェアを頻繁に開催する。

また、26年3月14日に、池袋西口の旧池袋マルイ跡地に建設される「IT tower TOKYO」の2~4階に、「ビックカメラIT tower TOKYO店」(仮称)を出店する。池袋駅から地下で直結する抜群のアクセスで、これまでの「ビックカメラ」とは異なる新たな形の店舗を目指すなどとし、池袋市場を盛り上げる。

都市型家電量販店のビックカメラは、インバウンドと東京ゼロエミポイントによるエアコンなどの販売が好調だ。日本空港ビルディングと共同出資するAir BIC社が空港に出店するスタイルの「Air BicCamera」は、コロナ禍で閉店を余儀なくされたが、その後のインバウンドの復活にあわせて再出店を加速している。東京独自のゼロエミポイントは、省エネ性能の高いエアコン、冷蔵庫、給湯器、照明器具を購入、買い替えた都民にポイント分を値引きする事業。高機能で付加価値の高い商品がお得に買えるとあって、都内に店舗を多く構えるビックカメラに追い風になった。
決算期が8月のビックカメラの25年8月期連結決算を振り返ろう。売上高は9744億8300万円(前期比105.6%)、営業利益は302億7400万円(同124.1%)、経常利益は319億2900万円(同119.7%)、当期純利益は174億7600万円(同125.7%)と増収、二桁増益を達成。売上高、営業利益、経常利益、純利益のすべてにおいて過去最高額を更新した。
セグメント別の昨対比では、テレビを含む音響映像(同99.9%)を除き、それ以外はすべて前年を上回った。具体的に、家庭電化(同101.1%)、情報通信機器(同110.8%)、ゲームや玩具、時計、医薬品・日用雑貨などのその他(同106.9%)だった。商品別で二桁増だった商品は、PC周辺機器(同112.5%)、携帯電話(同114.2%)、医薬品・日用雑貨(同117.7%)。ドラッグなどはインバウンド需要をうまく取り込んだ形だ。
ビックカメラの決算で注目したいのは、ECに伸びしろがあること。有料だった配送料を再び無料にしたこともあり、新規客数は前期比54%も増加した。顧客数の平均購入回数も同0.23回に増え、既存客を含む顧客数は同40%も増加した。27年8月にはECにおける品揃えを、23年比で約2倍に拡充するという。これらの施策により、単体でのEC売上高は25年8月期の実績である589億円から毎年増収を計画。中期経営計画で掲げる29年8月期の860億円を目指す。

なお、26年8月期連結売上高予想は1兆130億円(同104.0%)と、同社初となる1兆円の大台を狙う。
創業70周年を迎えたコジマも好調だった。25年8月期の売上高は2827億9000万円(同104.8%)、営業利益は73億2500万円(同115.2%)、経常利益は77億3200万円(同116.7%)とビックカメラ同様に増収、二桁増益を達成。8月単月のエアコン販売は、東京ゼロエミの拡充の影響もあり同148.7%という驚異的な伸びを示して好決算に寄与した。
26年は、アニメのキャラクターを使ったIPビジネスの発展、インバウンドの中国人客の減少を見据えた商品構成の見直し、エアコンの反動減を抑えるための施策などがポイントになるだろう。(BCN・細田 立圭志)




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