現場の活力を徹底反映!ビックカメラ池袋3店舗の大改装から見えるビック流経営戦略
- 細田 立圭志
- 3 日前
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更新日:2 日前
ビックカメラは11月14日、地元・池袋に構える池袋本店、池袋カメラ・パソコン館、池袋西口店の3店舗を大規模にリニューアルオープンした。もともと、ヨドバシカメラの池袋進出を迎え撃つ形で企画したリニューアルだったが、ヨドバシの出店が当初予定よりも遅れている模様の中、先行する形で池袋の家電市場を囲い込む。改装で狙うのは、新規客層となる若い女性客の獲得と、販売員の知見を全面に押し出した売り場づくりだ。

社内資格や表彰式で「スーパースター」を誕生させる
ビックカメラの池袋3店舗の同時リニューアルは、建物などハード面の改装というよりは、ソフト面の改装といっていいだろう。具体的には、若い女性客を取り込むためのコンテンツの充実や、社内資格制度「ビックカメラマイスター」で豊富な商品知識と高い接客力を持つ精鋭販売員集団が、日ごろの顧客との接点を通じて得たアイデアや知見を反映したボトムアップの売り場づくりだ。
特に、2023年に創設したビックカメラマイスターは、厳しい社内試験に合格した販売員のみが名乗ることができ、店舗従業員のうち1割未満(10月時点)しか任命されない。今回、普段は全国の各店舗に数名しか在籍していないマイスターの総勢34名が、26年2月末まで池袋に結集。家電販売のプロ中のプロがプロデュースしたリニューアルである。
また、そのマイスターたちが、188の各部門で大賞となる1商品を「ビックマイスター大賞 2025」として選定し、各売り場で展開している。ビックカメラマイスターと今回のリニューアルは、ビックカメラ全体の取り組みとも密接に関係している。


同社では、マイスター制度を導入した翌年の24年から、各部門の年間優秀者を表彰し、賞金を授与する「お客様喜ばせ大賞」という表彰式を開催している。会場の運営はほぼ100%、従業員のみで実施している。第1回は東京・文京区の椿山荘、第2回は25年10月28日に池袋のホテルメトロポリタンで開催した。

ビックカメラの秋保徹代表取締役社長は「年間表彰式は人にフォーカスしたイベント。社員の憧れの存在となるスーパースターを誕生させたい思いがある。スーパースターたちが各店舗の他の社員を引き上げてくれるので、これをロールモデル化したい」と語る。スーパースターの能力や接客における人間性は、販売員全員の意識改革に良い波及効果を生むというわけだ。

本部主導のトップダウンではなく、販売員が自主性をもって売り場を企画して担当する。そういう販売員が一人でも多く創出されれば、競合との差異化につながる。そんな取り組みが、今回リニューアルした売り場の随所に見られた。
池袋本店の8階に「すとぷり」の等身大パネルを展示
若い女性層の集客を促す仕掛けとして注目したいのは、池袋本店の最上階8階の階段前に設置された「すとぷり」の等身大パネルだ。アニメのキャラクターに扮して、生身の人間として顔出しせずにネット配信やツアーなどで活躍する2.5次元アイドルグループとして、若い女性から絶大な人気を誇る。各階の階段前にも、他の2.5次元アイドルグループやアニメキャラクターなどの等身大パネルを展示している。

人気キャラクターを最上階に展示して集客し、上から下へと各階を回遊してもらうシャワー効果を狙った施策だ。池袋本店の横井孝典店長は「池袋はサブカルの街。アニメ、キャラクターを好きな若い方がとても多い。キャラクターグッズの品揃えを充実させることで、これまで来店されてない層を取り込みたい」と意気込む。


7階には、アニメやゲームのキャラクターグッズやペンライト、ぬいぐるみポーチなどの推し活グッズを揃えた「ポップアップストア」を新設した。
デジタルカメラコーナーに、推し活グッズである双眼鏡などをクロス展示する手法はよく見かけるが、時流の知的財産(IP)ビジネスを絡ませて新しい客層を集め、商品を販売していく手法は、これまでとはまったく異なるアプローチだ。

スマホ周辺コーナーを1階、契約カウンターは2階へ
次に大きく変わったのが、家電量販店の顔である1階のスマートフォン周辺コーナーだ。以前はスマホの販売と契約カウンターが整然と並んでいたが、今回はスマホケースや充電器、ストラップなどスマホの周辺アイテムやグッズを展示。通路も広く確保し、圧縮陳列ではなく、棚も低くした。



3階のオーディオコーナーでは、すべてのスピーカーが試聴できる。4階の美容・健康家電コーナーでも、シャワーヘッドから実際に水が噴出してファインバブルの性能などをチェックできる。コーナーを担当する販売員のこだわりの装飾も注目だ。


体験型コーナーはビックカメラでも以前から展開していたが、衣類スチーマーのシワ伸ばし体験コーナーには驚いた。販売員に声掛けすれば通電してくれて、気になる商品の使い心地を気軽に試せるのだ。ネット通販では確認できない、リアル店舗ならではの取り組みだろう。

池袋カメラ・パソコン館のペンタブコーナーは必見
池袋カメラ・パソコン館で圧巻だったのは、ペンタブレット端末のコーナー。4列ほど並べた細長いデスクの上には、すべて実際に使えるペンタブレットがずらりと展示してある。しかも、立ちながら試せる通常のスタイルとは異なり、ゲーミングチェアなどに座って、実際の描画作業に近い姿勢で試せることだ。かなり熱が入っている。

「前の人が描き残したイラストを見れば、自分もチャレンジしてみたいと思うような効果も狙っている」と担当者は語る。駅や商業施設にあるオープン・ピアノを上手に奏でるのに近い感覚で、イラストの腕利きが集まる場所になりそうだ。プロのイラストレーターを招いて、ちょっとした体験イベントやレクチャーも開催できるだろう。アニメと相性のいい池袋ならではのコーナーとして、今後の発展に期待したい。
池袋カメラ・パソコン館のリニューアルでは、従来1フロアだったゲーミングPC・デバイスのコーナーを2フロアに拡大。池袋はeスポーツカフェが密集していることもあり、ゲーミングをする若い客層の取り込みを狙う。

自作PCの組み立てをサポートする「パソコン組立工房」も
6階のゲーミングコーナーでは、店頭での販売モデルやBTOのオーダーPCだけではなく、パーツを選んで組み立てる組立PCも訴求。PC専門店さながらの自分だけのオリジナルPCを提案する。


自作PCへのハードルを高く感じる顧客には、販売員が代行して組み立てたり、一緒にサポートしながら組み立てるコーナー「パソコン組立工房」も用意した。

7階のゲーミングコーナーは、アプローチのエスカレーターから趣向を凝らしている。1人乗りエスカレーターの幅の狭さを逆手にとって、天井のスピーカーから迫力ある音が体を包み込むように響き渡る。異次元の空間に導かれるような感覚と期待感が膨らむ。

新設したのは、実際のゲームタイトルをプレイできるコーナーだ。コントローラーやキーボードなどの使用感を人気タイトルで体感できるので、感覚の違いがよりリアルに把握できる。

地域密着型の池袋西口店
池袋の西口エリアは、東口と違って大学があったり、住宅地が広がる。そのため、ビックカメラ池袋西口店は学生や住民、商店街など、より地域の生活に密着した店舗にリニューアルした。

まず、間口にあった壁を取り外して、入口を倍の広さにして入りやすくした。1階には、学生が講義や自宅で使うスマホアームやアームスタンド、スマホストラップなど、スマホ周辺機器を充実。バッテリー切れで急に必要になるモバイルバッテリーや充電器の品揃えも充実している。


店舗の建物の構造上、エスカレーターは5階までで、6階と7階にはエレベーターで昇らなければならない。従来、家電売り場は6階にあったが、今回3階に移動。「商店街やオフィスの方がLED電球を購入しに来られるケースも多く、アクセスしやすいようにした」と山本純一朗店長は語る。


調理家電コーナーでも、オリジナルのポップを上手く使ったり、奥行きや立体的に空間を使った展示手法を取り入れるなどして、必ずしも広いとはいえない売り場でも、狭さを感じさせない。

家電市場はエアコンや洗濯機、冷蔵庫、テレビなど耐久消費財の買い替え需要に支えられた成熟市場である。チャレンジせずに何も手を打たなければ、少子高齢化による人口減に合わせて売り上げは減少する。ビックカメラのリニューアルからは、池袋本店のポップアップストアに象徴されるように、新しいマーケットを取り込んだり、シナジー効果を活かすための現場での工夫や挑戦が見受けられる。その原動力の源となっているのは、プロの家電販売員にフォーカスした人の力だ。(BCN総研・細田 立圭志)
