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「ゴリラ」シリーズはなぜヒットするのか、遊び心ある商品企画と緻密なSNS・店頭マーケティング

入社3年目の女性社員が2024年2月に、ふくらはぎをケアする「ゴリラのひとつかみ」を発売してから始まったゴリラシリーズ。26年6月に25アイテムまで増え、累計販売は300万個を突破した。ヒットメーカーを生み、次々と爆売れする裏には、ドウシシャならではのスピード企画を実現する体制と、商品企画を楽しむ「ENJOY」の精神があった。


ドウシシャ 家電商品ディビジョンの水島英恵ブランドマネージャー
ドウシシャ 家電商品ディビジョンの水島英恵ブランドマネージャー

26年中に30アイテムを超える


 ゴリラシリーズの商品開発を統括する家電商品ディビジョンの水島英恵ブランドマネージャーは、入社3年だった24年2月にふくらはぎケアの「ゴリラのひとつかみ」を、同年6月に足裏ケアの「ゴリラのひとつき」を発売。SNSで話題になり、発売後わずか1カ月で10万個を受注し、業界から注目を集めた。


 それ以前はまったく異なる部署に所属し、商品企画は初めてのことだった。自身でも健康家電を使ったことがなかったほどだ。あれから2年5カ月、ゴリラシリーズのカテゴリーはキッチン雑貨や寝具、美容家電、季節家電などに拡大。25アイテムまで増加し、累計販売は300万個を超えた。


 「26年中に30アイテムを超える見込みです。カテゴリーもまだまだ拡大する予定です」と、水島さんの意欲は衰えを知らない。まさにヒットメーカーだ。


2年5カ月でシリーズ累計販売300万個を突破
2年5カ月でシリーズ累計販売300万個を突破

 最新の商品でも、26年4月に発売した接触冷感ブランケット「ゴリラのハグ夏 GRSS100」は、商品ラッピングのサンプルが足りなくなるほどの品薄に。表にさらりとした接触冷感生地を採用し、中材にあったかい2mm厚のウレタンフォームを採用する。アイスグレーとラベンダーの2色展開で、価格は4950円。


エアコンつけっぱなしで使う「ゴリラのハグ夏 GRSS100」
エアコンつけっぱなしで使う「ゴリラのハグ夏 GRSS100」

 水島さんは「エアコンをつけっぱなしにして使うブランケットです。私も深夜に起きたり、命の危険もあるので、朝までエアコンをつけっぱなしにしています。我が家だけでなく、皆さんも多いのではないでしょうか。ただ、エアコンによる寝冷えというストレスもありました。ゴリラのハグ夏は、深夜の体の冷えから、体温を守ってくれます」と説明する。


 今ではキッチン雑貨や寝具、美容家電、季節家電など各ジャンルに1人の担当が付き、全体を統括する水島さんを含め、チームゴリラには約5人が携わる。細かな打ち合わせは都度するが、商品企画から発売するまで、正式な会議は2回だけというスピード開発が光る。


猛暑対策グッズも充実
猛暑対策グッズも充実

独立採算のスピード企画とENJOYの精神


 ドウシシャのモノづくりの特徴について、第2事業本部 第2広報部の青木響ダイレクターは、九つの事業本部による独立採算制と、ENJOYの精神を挙げる。


 家電製品であるゴリラシリーズは第2事業本部の担当だが、それ以外のカテゴリーでもヘルス&ビューティー、ブランドバッグ、アパレル、AV・ライティングなど九つの専門性の高い各事業本部が、独立採算で企画から販売まで完結する。「ニッチ市場の追求と、スピード力のある企画開発が大きな強みです」と語る。


九つの事業本部の独立採算制
九つの事業本部の独立採算制

 もうひとつのENJOYの精神は、文字通り楽しんで商品企画や開発することを意味する。「商品を企画する人は、お客様に受け入れられるのかと不安に駆られますが、モノづくりをする人は、やはり楽しまないと、という意味が込められています」と青木さん。


ENJOYの精神
ENJOYの精神

 また、大阪に本社を構えるドウシシャらしく、ENJOYにもひねりがあり、各英字を大阪弁で表現する。E=ええやん(賛同)、N=なんでやねん(動機)、J=自分(敬意)、O=おもろいやん(評価)、Y=やったらええやん(挑戦)。


ENJOYの各英字に意味を込める
ENJOYの各英字に意味を込める

 「スピード企画開発と顧客目線でまずは世に出してみよう。完璧を待つより、まずはチャレンジしていこう。こうしたENJOY精神は、ゴリラシリーズにも表れています」と青木さんは語る。


事業本部横断企画の「ゴリラの裸足」


 ゴリラシリーズでは、新しい挑戦も行っている。それが、新規カテゴリーとなる健康サンダル「ゴリラの裸足」だ。6月18日から同社ECで販売を開始し、順次、全国の販売店で一般販売を開始。ゴリラシリーズでは初となる事業本部の壁を超えた企画となる。


ゴリラの裸足
ゴリラの裸足

 もともと、フットウエアを扱っている第5事業本部のフットウェア商品部で、リカバリーウエアに続く次のトレンドとして、足の負担を軽減する「リカバリーシューズ/サンダル」を企画していた。健康サンダルというと、昔ながらの豆粒の突起があるものがイメージされるが、新卒の若いメンバーは、健康サンダルそのものへのイメージがなかったという。


 そこで、女性向けの新しい健康サンダルを開発することに。「女性向け健康グッズなら」ということで白羽の矢がたったのがゴリラシリーズだった。「親和性が高いのではないか」として、第5事業本部のフットウエアチームは、第2事業本部のチームゴリラに打診した。


初の事業本部横断企画
初の事業本部横断企画

 チームゴリラで実際に履いてみると、機能性は抜群で気持ちよかった。だが、売り場では埋もれてしまうと思い、「もっとインパクトのあるデザインになりませんか」とリクエストした。


 その結果、フットウエア商品部のメンバーが、インソールだけでなく全面を球体で集めたデザインを提出。水島さんは「チームゴリラの打ち合わせでもかなり盛り上がり、思い切った企画だけど話題になるのではないかと考え、挑戦することが決まりました」と振り返る。


 立体感のある独特のビジュアルに加え、インソール部の中央に他の凹凸よりも約5mm高く設計した「隠れゴリラ」を配置。歩くたびに、足裏をぐりぐりと心地よく刺激する。サンダルの表や裏にも隠れゴリラを配置する遊び心も忘れない。商品企画を楽しむ、ENJOY精神が浸透している。


 だが、社員や取引先など業界に詳しいメンバーに見せたところ「え、何これ!?」「本当に大丈夫か?」といった声が多く、不安視されたという。


先行販売でSNSの動画再生数が300万回超え


 マーケティング施策にノウハウがあるのも、チームゴリラの強みだ。SNSで話題にしてもらうため、シャインマスカットを想起する黄緑色の限定カラーのプレゼントキャンペーンを実施。売り場では、ゴリラの足裏のシワまでこだわった、従来の常識を覆すような什器を展開した。


SNSを使ったマーケティング
SNSを使ったマーケティング

思わず足が止まるゴリラの足裏什器
思わず足が止まるゴリラの足裏什器

 その結果、4月に一部店舗で先行販売したところ大好評だった。「SNSで若い女性から“ながらケア”ができるアイテムとして、動画再生数300万回を超えるほど大人気なんです」と水島さんは笑顔で話す。


 レディースサイズでS、M、Lを用意。グレー、ホワイト、ブラック、ミントグリーン、パープル(販路限定)のカラーを展開する。


 商品企画を楽しむことは大切だが、独りよがりになったり、あれもこれもと多くの機能を搭載したりしてしまうことは往々にしてある。チームゴリラでも、新しいことを生み出したり、ENJOY精神でインパクトを楽しむ一方で、徹底して顧客視点に立った潜在ニーズの掘り起こしや、事業本部の独立採算によるスピード開発、SNSや売り場でのマーケティングがうまくかみ合っていることが、商品のヒットにつながる理由だろう。(BCN総研・細田 立圭志)


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