徹底分析!「ビックカメラ池袋西口IT tower店」が提案する「自分らしい暮らし」を発見する体験型売り場づくり
- 細田 立圭志

- 6 時間前
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東京・池袋西口の新しいランドマークとして3月14日に開業した「IT tower TOKYO」。同施設の2~4階にオープンした「ビックカメラ池袋西口IT tower店」は、初日から大きな賑わいを見せた。これまでのビックカメラとは異なるフロア構成で、20~30代の若い女性客を取り込む。「家電×衣・食・住」のクロスマーチャンダイジング(クロスMD)戦略を分析する。

「家電×衣・食・住」で生まれる「暮らしのイメージ」提案
ビックカメラ池袋西口IT tower店は2階が「食」、3階が「衣」、4階が「住」と、フロアごとにテーマを設定。家電と関連雑貨・日用品などを並べることで、来店客が自分の生活シーンを自然に思い描ける売り場を演出している。
家電単体の展示だと、どうしても価格やスペック比較に終始しがちだ。品揃えが豊富でも「機能に大した差がない」と思えば、選択する上で価格だけが最優先される。これだと、リアル店舗での買い物体験に新しい発見がないし、面白くない。「ネットで購入すればいい」となる。
しかし、雑貨や日用品と組み合わせることで「この家電がある生活」をイメージしやすくなる。お客は自分の生活シーンを思い浮かべながら、その商品を使っている自分をイメージする。
ビックカメラ池袋西口IT tower店では、コーナーごとにテーマ設定やシーン提案を展開。実際のリビングやキッチン、ランドリールーム、子ども部屋を再現し、そこに家電や雑貨を展示したコーナーもある。来店客に「自分もこんな生活が送りたい」と思えるような、ストーリー性のある売り場づくりといえる。
また、実際に電源を入れて商品を使ったり、触ったり、おいしいかどうかを体験できるのもポイントだ。ドライヤーの風量や静音性、自分の髪になじむヘアアイロンか、本当においしいごはんが炊ける炊飯器なのかなどをチェックできる。
「食」フロアの「試食堂」で試食イベントを実施
順番に売り場をみていこう。エスカレーターで2階の「食」フロアに上がると、AKOMEYA TOKYOとコラボしたコーナーが広がる。

米や食雑貨、食器、調理ツール、ごはんのお供、ドレッシング、ギフト商品などとともに炊飯器やオーブンレンジなどの調理家電を展示。什器のトーンもAKOMEYA TOKYOに寄せて、薄いベージュの木材とホワイトを基調に、落ち着いた空間に仕上げている。


奥にはビック酒販が手掛ける酒類コーナーがあり、ワインだけでも約100種類以上を揃える。リキュール、お酒、クラフトビールなどいろいろなジャンルの酒類を展示。いずれも国産にこだわっている。試飲もでき、「日本にこんなスパークリングワインがあったんだ」と感じるような新しい発見がある。


上りエスカレーターの反対側に行くと「試食堂」という大きな看板が見える。中央のキッチンを囲む形で、炊飯器の炊き比べや、コーヒーマシンで飲み比べを体験できる。オープン日は、タイガー魔法瓶の「土鍋ご泡火炊き」の試食や最新コーヒーマシン8機種の飲み比べを実施していた。

高級IHジャー炊飯器で炊いたごはんは、粒立ちがよく香りもあり、普通の炊飯器とは明らかに食感や味が違う。その違いを体験できる。そもそも試食せず、約10万円の炊飯器を購入するのは、なかなか勇気がいるものだ。「買い物を失敗したくない」という気持ちは、誰もが持つ当たり前の感情で、試食堂はこの心理的な壁を取り払う役割を担っている。

コーヒーマシンも、数多くの中から自分好みのマシンを選ぶのは至難の業。8機種を飲み比べることで、自分にマッチしたマシンが見つかるだろう。また、販売員の実演を見ながら、メンテナンスの簡単さも確認できる。

試食堂には、オーブンレンジやトースターも展示しているので、今後はこれらの家電で調理したイベントも開催するのだろう。座ってくつろげるコーナーも用意しているので、じっくりと試食や試飲を体験できる。

「衣」フロアはとことん試せる「トライフル スタジオ」が注目
3階の「衣」フロアは、「外出シーンから、選ぶ。自分らしさが見つかる場所」というテーマ設定。特にビューティーコーナー「トライフル スタジオ」は、ドライヤーやヘアアイロン、シェーバーなどの美容家電をじっくり試せる。

トライフル スタジオにある独自の什器も注目だ。本棚のような縦長の什器は連結でき、角度をつけることで目隠し効果を生む設計。人目を気にせず試せる配慮がされている点も大きい。
什器の中段に電源と鏡があるので、鏡を見ながら自分の髪との相性まで確かめられる。スタイリング剤を使って身だしなみを整えられるのもうれしい。なお、試し終わった実機は棚の下にあるカゴに入れれば、販売員がきれいにメンテナンスしてくれる。


週末には「プロのヘアアレンジ実演イベント」も実施。スタイリストが最新ビューティー家電を使いながら、ヘアアレンジのコツを教えてくれる。

ビックカメラ初の取り組みとして、サブスク・レンタル「エアクロモール」が提供する「家電レンタルサービス」も面白い。気になった美容家電(ドライヤーとヘアアイロン)を持ち帰ったり、配送して自宅で試したり、気に入れば購入できる仕組みだ。商品により価格は異なり、月額990円~となっている。

ほかにも、ビックカメラとクラファン「CAMPFIRE」の共同企画「ビック FIRE」の特設ブースも設置。注目の商品10点以上を展示している。普段はネットでしか見られないアイデア商品を、実際に手に取って確かめられる。展示品は約1カ月で入れ替わるという。
クラファンでプロジェクトを公開するスタートアップにとっても、リアルで商品と顧客を結びつけ、顧客の声を直接拾える絶好の機会が得られる。リアルとネットの相乗効果を生む施策といえる。
POPUPスペースでは、フレグランスの販売にも挑戦。インバウンドに特化した店舗でフレグランスを扱うことはあるが、通常の家電量販店の取り組みとしては珍しい。今回はフレグランスブランド「SHOLAYERED」のブースを、ビックカメラ初で展開。同スペースの周辺はいい香りが漂い、リラックスした気分で買い物を楽しむ効果もありそうだ。

「住」フロアはイメージが膨らむ暮らしのシーン提案を徹底
4階の「住」フロアは、「#暮らしライブラリー」としてコの字型に仕切られたコーナーが並ぶ。各コーナーで、暮らしのシーンに合わせた家電や雑貨、日用品などを展示する。
例えばランドリールームでは、「1日の疲れを洗い流す」というテーマのもと、バスタブの中に、湯船で子どもと遊べる「こびとづかん」のバスボールやリラックスグッズが豊富に入っている。その奥や周りには、オリジナルタオルやシャワーヘッド、シャンプー、ボディーソープ、掃除グッズなどを展示している。

「#おうちでできる本格フェイシャル」と題したコーナーでは、RF美顔器やEMS美顔器、ポイントケア美顔器、スキンケアグッズを組み合わせて展示。男性向けも同じように「できるオトコの身だしなみ」として「#忙しい朝を整える」をテーマに、メンズシェーバーやグルーミング、スキンケアグッズを揃えている。


このように「#」をつけたテーマ設定は、XやInstagramなどSNSのハッシュタグを通じた顧客とのコミュニケーションを狙う。SNS上の声を拾い、品揃えに反映させる試みだ。
重点施策のオリジナルブランド「ビックアイデア」が始動!
最後に、オリジナルブランド「ビックアイデア」を紹介しよう。ビックカメラの今後の注力事業として、同店で先行販売でスタートしたのがビックアイデアだ。4月1日からは、全国のビックカメラやコジマ、ECのビックカメラ・ドット・コムでも販売を開始する。
ビックアイデアは、社内資格「ビックカメラマイスター」を有する接客力や専門性の高い販売員が中心となって企画・開発した商品ブランド。2030年に売上高1000億円を目指す。ビックカメラグループの売上高の約1割を占めるほどの重点施策だ。

スペックが優れているだけの商品ではなく、商品を手に取ったときに「よくぞ出してくれた!」という気づきや感動を与える商品を提案する。
ネット販売は便利である一方、購買行動の効率化や合理化の行き過ぎで、買い物そのものの疲れや、選ぶ楽しみがなく、つまらなくなってしまっていないか。そんな疑問から生まれた。

ネットで購入したそばから次の買い物を促すレコメンド機能も、行き過ぎると便利どころか、自分が操られている気持ちになるという経験はだれでもあるだろう。
ビックアイデアはこのような状況に抗う。リアル店舗ならではの新しい発見や出会い、ほしいという感情が自然に立ち上がるような商品を、日ごろから顧客と接している販売員が商品企画に反映させる。最初は約15~20種類でのスタートだが、今後はさらに加速していく。
ビックカメラ池袋西口IT tower店には、新しい試みが随所に散りばめられている。エアコンや冷蔵庫、洗濯機がずらりと並んだ売り場を想像していくと面食らうだろう。各商品ジャンルのメーカー数も相当絞り込んでいる。
人の感情や感性を揺さぶるクロスMDによるくらし提案は、リアル店舗の価値を再定義し、新しい発見や買い物の楽しさを取り戻すための施策だ。オープン初日の賑わいを見ると、これまでビックカメラが取り込めていなかった若い女性客も多かったし、店舗のコンセプトに驚いたり、楽しんでいるリアクションも見られた。家電量販店の新しい売り場づくりとして、参考になる点も多いはずだ。(BCN総研・細田 立圭志)



