ビックカメラが初の売上高1兆円突破、ヨドバシカメラ進出後の「池袋エリア」は売上高と客数が前年増、2026年8月期連結通期決算
ビックカメラは10月20日、2026年8月期の連結通期決算(25年9月~26年8月)の説明会を開催した。連結売上高は1兆411億6500万円(前期比106.8%)となり、グループ初の1兆円を突破した。通期予想の1兆220億円も上回り、過去最高を更新した。ビックカメラ単体やグループのコジマも増収増益だった。

ビックカメラの26年8月期連結通期決算の利益は、営業利益376億6400万円(同124.4%)、経常利益389億1100万円(同121.9%)、当期純利益203億5300万円(同116.5%)となり、各段階利益も過去最高だった。

ヨドバシカメラの池袋進出による影響は?
6月30日に「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」をオープンしたヨドバシカメラの池袋市場への攻勢では、興味深い数字がある。
ビックカメラのエリア別売上高(26年7~9月)の前年同期比で、池袋地区は106.9%と前年を上回り、客数は121.5%と大幅増だった。全店平均の売上高103.8%、客数111.2%を上回る水準なのだ。

ヨドバシカメラの池袋進出を迎え撃つ形で、ビックカメラは6月25日~8月2日まで長期にわたる大型キャンペーン「池袋大感謝祭(池祭)」を開催。地元・池袋の4店舗(池袋本店、池袋カメラ・パソコン館、池袋西口店、池袋西口IT tower店)限定で、各種イベントや体験会、徹底的な価格対抗、ポイント還元策を打ち出した。
こうしたキャンペーンに加え、競合の出店によりビックカメラ、ヤマダデンキ、ノジマなど池袋の家電バトルがメディアで大々的に取り上げられ、人流が増えたと考えられる。
秋保徹代表取締役社長は「7月、8月になるにつれてお客さまが増えたのは事実です。(競合が出店しても)売上高に影響はなく、むしろ前年より増えました。前年は8月30日に東京ゼロエミポイントが拡充され、9月にエアコンのものすごい特需が発生したり、EOSに向けて8~9月中旬ぐらいからPCが動くといった特殊要因があり、東京の店舗で影響が大きく、直近3~4カ月の状況を測り切れていない部分はあります。ただ、“家電を買うなら池袋”と思って来られるお客さまは、間違いなく増えました」と語る。

各社ともヨドバシカメラに対抗し、店舗内外で「他店より1円でも高い品は販売員までぜひ!お申し付けください」(ビックカメラ)、「他店徹底対抗 価格は必ずご相談ください」(ヤマダデンキ)、「どこよりもお買い得に挑戦!他店徹底対抗セール」(ノジマ)として価格競争を打ち出した。
ヨドバシカメラでも「本日20時までの大特価」とする当日限定の「タイムバーゲン」をゲリラ的に実施するなど激しさを増した。さらに、いずれの店舗も隣接していて回遊しやすいことから「池袋価格」が形成。「家電を買うなら池袋」というイメージが醸成された。
さらに埼玉地区に目を広げてみると、売上高は同122.5%、客数は同129.5%と、いずれも2割近くの増となった。
この点について秋保社長は「都市型と郊外型の多彩な店舗フォーマットが、グループ店舗間の相互利用を促しています。都市型の池袋地区は賑わいを創出し、イベントや人流を生かした集客力を強化しました。また、郊外型の埼玉地区では、浦和西口店を出店するなど、地域特性を生かした店舗展開を進めました。こうした取り組みが奏功し、池袋地区と埼玉地区ともに、売上高、客数の前年同期比で好調に推移しました」と説明する。

ビックカメラの浦和西口店、コジマ×ビックカメラminanoba川口店、じゃんぱらのモバイルプラス南浦和駅前店の出店効果もあるが、池袋を起点に西武池袋線、東武東上線、埼京線、武蔵野線の沿線にソフマップを含むグループ店舗を展開し、面で制圧するマーケット戦略が実績につながっている。
スマホは残価設定型契約で買替サイクルが短く
連結決算の内容に戻ろう。商品別売上高で前年を大きく上回ったのは、カメラ(前期比117.1%)、エアコン(同117.9%)、スマートフォン(同118.8%)、時計(同119.3%)だった。

カメラや時計はインバウンド需要や、推し活など趣味・嗜好の高まりを背景に好調に推移した。
スマートフォンは、iPhoneなどの最新端末における残価設定型契約で買替サイクルが短縮化し、前年に引き続き伸長した。エアコンは東京都の店舗で東京ゼロエミポイント制度の効果に加え、コジマなど郊外店舗でも省エネ基準が厳しくなり価格高騰が懸念される「2027年問題」を見据えた、エアコンの買い替え需要を取り込んだ。
テレビ(同97.4%)は前年を下回った。スマホで動画配信を視聴するユーザーが増え、テレビの視聴機会が減少したことから全体的に低調だった。ただ、ミニLEDテレビの伸びやオリンピック、WBCなどスポーツイベントによる買い替え効果で、底堅さを見せる局面もあったという。
ビックカメラ単体はインバウンドとECも好調
ビックカメラ単体の決算をみよう。売上高5089億4400万円(同107.7%)、営業利益135億7700万円(同143.3%)、経常利益184億3300万円(同125.9%)、当期純利益116億3400万円(同107.4%)の増収増益だった。売上総利益(粗利益)は1260億900万円(同108.6%)で、粗利益率は24.8%。前期から0.2ポイント改善した。
ビックカメラで特徴的なのは、売上高構成比13.8%のインバウンド事業が702億円(グループで850億円)と好調だったこと。増減では前期から100億円積み増し、2年連続で過去最高を達成した。

地域別構成比で中国からのインバウンドは38.5%から23.2%に減少した一方、東南アジア、欧州、北米、オーストラリア、台湾の構成比が上がった。その他、トルコなども意識した品揃えを強化した。販売商品の構成比の大きさは理美容、カメラ、時計、医薬品・化粧品、オーディオの順だ。
EC事業の伸びしろも大きい。売上高構成比で15.9%の809億円を占めるEC事業は、前期から39億円を積み増した。送料無料を再開した24年8月期比で、単体は26年8月期に115%だった。27年8月期は129%を予想する。品揃えを強化するほか、店舗顧客のEC利用促進、置き配やメール便など受け取り方法の利便性の向上、AI検索からの流入増に対応するなどを実施する。

子会社のソフマップとじゃんぱらも各段階利益が大幅増
子会社では、ソフマップとじゃんぱらの各段階利益が、前期から大きく改善した。ソフマップは売上高461億7300万円(同108.2%)、営業利益9億8400万円(同360.7%)、経常利益11億3900万円(同253.7%)、当期純利益7億6400万円(同213.1%)だった。
EOSによるPC駆け込み需要のほか、ゲーミングPCの需要の高まりもあり、新商品の売上高が伸びた。
また、リユース事業である中古品販売も好調。ビックカメラグループで連携している買取総合アプリ「ラクウル」の会員数は、24年8月期比で144%、買取金額も同125%と大きく伸びた。サーキュラーエコノミーの一翼を担うラクウルは、中期経営計画でも重点戦略に位置付けられており、29年8月期に会員数400万人の目標を掲げる。
じゃんぱらは売上高217億9700万円(前期比109.6%)、営業利益12億1700万円(同245.1%)、経常利益11億7600万円(同230.7%)、当期純利益8億1100万円(同254.7%)だった。

コジマの営業利益はコロナ禍の反動減から回復
コジマの26年8月期決算は、売上高2976億3200万円(前期比105.2%)、営業利益86億2200万円(同117.7%)、経常利益89億1100万円(同115.3%)、当期純利益55億2900万円(同117.4%)の増収増益だった。

特に営業利益は、コロナ禍の巣ごもり需要の反動減があった23年8月期から毎年改善。営業利益率は2.9%まで回復した。

上期は売上高の増加と経費コントロールにより利益計画を達成。下期はエアコンの好調により、上期の商品ミックスの影響が改善し、粗利益率は27.4%となり、前期から0.25ポイント改善した。
商品では東京ゼロエミと2027年問題からエアコンが貢献。スマホはビックカメラと同じく、iPhone 17やiPhone 16などを中心とした残価設定型契約による販売が進み、買い替えサイクルが短縮化し、好調を維持した。PCやNintendo Switch 2の在庫回復によりゲームも貢献した。一方で、Switch 2は6月以降、価格改定や前年の需要が一巡したことも影響して販売は低調だった。
コジマでは「Big Sunny Smile 笑顔で、地域に陽だまりを。」のメッセージを掲げて創業70周年感謝祭を開催。25年4月からアンバサダーとして俳優の奈緒さんを起用した新CMを放映したり、25年12月~26年2月はTVアニメ「呪術廻戦」とのコラボ企画、26年2~4月は創業70周年感謝祭Finaleを展開するなど大々的な販促策を仕掛けた。
特に13年ぶりとなる単独TVCMで奈緒さんを起用したこともあって、「若いお客さまの来店が増えたり、若い販売員のモチベーションアップにもつながりました」と中澤社長は語る。
「デジタル機器の販売・サポートNo.1企業」を目指す
ビックカメラの27年8月期連結通期決算は、売上高1兆820億円(同103.9%)、営業利益390億円(同103.5%)、経常利益395億円(同101.5%)、当期純利益212億円(同104.2%)を予想する。

新たな成長戦略として「デジタル機器の販売・サポートNo.1企業を目指す」と掲げる。スマホを軸にグループ横断の成長戦略を強化する。そのために26年9月、従来の「サーキュラーエコノミー推進部」による事業モデルが一定の道筋をつけたことから発展・改組する形で「スマートライフ推進部」を新設した。
社会課題として、人口減少による生産労働人口の減少や物価高による実質賃金の低下、耐久消費財の使用年数の長期化などがある。買い替え需要の減少により、家電市場の縮小が懸念される。
そうした中でもスマホは買い替え年数が短く、世帯普及率も高い。都市型のビックカメラや郊外型のコジマ、中古・リユースのソフマップ、じゃんぱら、通信キャリア一次代理店のラネット、リアル店舗とECなど、グループのアセットとのシナジー効果も狙える。

また、オリジナルPBの「ビックアイデア」も成長戦略の中核となる。そのために、MD本部直下の商品開発室を商品開発部に昇格させ、開発サイクルを加速する。特に、ビックアイデアでは顧客の声だけでなく、社内資格であるビックカメラマイスターを持つ販売員の現場での気づきや知見も反映している。中期の売上目標は1000億円だ。
前述した都市型と郊外型の相互利用の促進やEC事業の強化などと合わせて、27年8月期の通期目標の達成を目指す。(BCN総研・細田 立圭志)





