スマートフォンの販売伸長の一方で買い替えサイクルも長期化
- BCN

- 7月30日
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スマートフォン市場が伸長している。BCNが収集しているPOSデータを集計したBCNランキング(時系列パネル)では2025年1月から5月まで、スマートフォンの販売台数は前年同月比130%前後で推移した。6月はここまでの高い伸びにならなかったものの、同約114%で2桁成長。2025年1~6月の上期累計では販売台数が同129%、販売金額が同134%であった。
一見、好調に見えるスマートフォン市場だが、平均使用年数は過去よりも長くなっている。つまり、次の買い替えまでの期間が長期化しているのだ。
内閣府の消費動向調査によると、スマートフォンを含む携帯電話の平均使用年数は2025年3月で2人以上世帯と単身世帯ではともに4.3年。ここ数年間では若干短くなっているが、2000年代は2年台で、2010年代半ばまでの3年台と比べても次の買い替えまでの期間は長期化していることが分かる。
買い替えサイクル長期化の3つの要因
では、なぜ次の買い替えまでの期間が長くなっているのだろうか。その要因としては3つのポイントが考えられる。以下で簡潔に紹介しよう。
1. 端末価格の高騰
スマートフォンの高機能化や原材料、輸送費、人件費を含む製品化までのコスト高騰により、端末単価は上昇基調で推移している。特にフラッグシップモデルでは10万円を優に超える価格帯が当たり前となり、消費者にとって「気軽に買い替える」商品ではなくなった。
2. 技術革新のスピード鈍化
従来のような劇的な性能向上や機能追加が少なくなり、「買い替える必然性」を感じる消費者が減少している。カメラ性能やディスプレイ品質の向上はあるものの、日常使用において体感できる差が小さくなっている。
新しい機能としてAIアシスタントの活用もあるが、AIは単独の機能として成立するのではなく、ある目的遂行をアシストすることがメインだ。つまり、AIはカメラやブラウザ、ボイスレコーダーなどと組み合わせて使用する補助機能のため、AI搭載そのものが買い替え促進策とはなりにくい。
3. 端末の耐久性向上
バッテリー性能が向上し、ある程度長期間の使用でも劣化が少なくなっている。製品品質自体も向上しており、長期間の使用でも不具合が少ない。さらに複数回のOSアップデートにも対応する製品が増え、これらの結果として、「まだ使える」状態の期間がかつてのモデルよりも長くなっている。
前述の消費動向調査の買い替え状況でも買い替え理由は「上位品目」、つまり魅力的な上位モデルによる買い替え促進よりも「故障」による必然的な買い替えの方が多い。バッテリーも含む製品品質の向上により、買い替え理由の「故障」そのものが少なくなり、結果として「故障」に由来する買い替えが長期化しているというわけだ。
POSデータが示す市場の実態
BCNランキングデータを見ていくと、従来とは異なる動きが分かる。
2025年1~6月の上期累計のデータでは、やはりiPhoneの販売台数シェアが非常に高い。だが、この期間で最も売れたのは2023年9月発売のiPhone 15。最新モデルのiPhoneよりもシェアで2ポイント以上の差がある。
SAMSUNGで同期間に最も売れたのはメインストリームのGalaxy S25シリーズではなく、発売日がS25よりも遅かったGalaxy A25である。
すべてのスマートフォンメーカーのシリーズがこのようになっているわけではないが、最新機種の発売を待って即購入というパターンから仕様やスペック、そして価格も踏まえて購入するというパターンへの変化が垣間見える。これらは前述の買い替えサイクルの長期化要因とも合致する傾向ではないだろうか。
特にSAMSUNGのシェアが4月に21.5%まで急上昇した背景には、Galaxy A25などの戦略的価格設定が奏効したと捉えることができる。
今後の市場展望
端末価格高騰等による買い替えサイクルの長期化は一過性のものではなく、構造的な変化として定着すると予想される。メーカーにとっては厳しい環境だが、同時に総合的な販売戦略として他社差別化ができる機会でもある。
POSデータは単に製品・メーカーのシェアを把握するだけにとどまらず、市場全体を俯瞰することもでき、市場や消費者の購入における微妙な変化を先取りして把握することも可能だ。POSデータという販売実績データを、この先を見通す指標の一つとして活用していただきたい。




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